第28回
火の記憶
皆さん、こんにちは。ここ数回は、難しい話題が続いたので、今回は、軽い話題?にしてみました。
皆さんは、最近焚き火をしたのはいつ頃のことでしょう? 「山茶花 山茶花 咲いた道 焚き火だ 焚き火だ 落ち葉焚き・・・」街を歩けば路地で誰かしらが焚き火をしていた風景などというのはもう、昔の話でしょうか。私は先日、家の裏で焚き火をしようとしたら、妻から「家の周りで火なんてつけないでよ!」と、えらく叱られてしまいました。しかし、私が子どもの頃は、家から出た燃えるゴミを裏庭の穴で燃やすことは、私の係仕事のようなものでした。
庭のある家庭で、個々人が家から出たゴミを燃やさなくなったのは、ダイオキシン云々と騒がれた出した時期からでしょうか。うちでも、人から止めなさいといわれたのか、もう危険だと考えたのか、庭でゴミを燃やすことは止めてしまいました。ずいぶん昔の話です。それでも、あの頃は火を燃やすのが好きでしたから、そのためにダイオキシンの影響があるとしたら、自分は早死にするのかなぁなどとくだらないことを考えたりします。
ところで、人類が「火」を手に入れた、一番の最初は、雷か何か大きなエネルギーが山火事のようなものを引き起こし、そこから持ち帰ったのが始まりだったことでしょう。体を温めるのにも、調理をするのにも役に立つ「火」を、自分たちのものにしようと、人は火のおこし方を考え始めたに違いありません。遠い遠い、有史以前のことでしょう。
先日、学校の授業で、「マッチもライターも使わずに、火をつける方法を考えよう」という課題を出してみました。集まったレポートの多くは、「木の棒で、木の板を、ゴリゴリガリガリと火がつくまで、穴をあける要領でこする」というものでした。そうです、皆さんご想像の通り、原始人がやっているいわゆるキリモミ式とかユミギリ式とかマイギリ式とか呼ばれているあの方法です。それじゃぁさっそくその方法で、火を起こしてみようか! というわけで、やってみました、キリモミ式火起こし。結果は、・・・全然、ダメ。難しかったのです。板が焦げてあともう少しで・・・というところまではいくのですが、そこから先、炎が上がるというところまでは見られずに、僕らは力尽きたのでした。はぁ~・・・。火を起こすのって難しいんだね、という授業にはなりましたが、「マッチもライターも使わずに、火をつける方法を考えよう」という課題はクリアしていません。・・・ちょっと待った! A君のレポートには別の方法が書いてありました。なるほど、「レンズを使う。」! ずるいようですが、先生、ちゃんと用意してきてあります。「マッチもライターも使わずに」だったら、レンズは使っても良いんでしょ? OKです。・・・着火。・・・というわけで、太陽の出ている日なら、凸レンズ・虫眼鏡・拡大鏡があれば、火はすぐにつきます。それほど、太陽のエネルギーは偉大でした。オリンピックの聖火は、凹面鏡を利用して採火していますよね。ただし、太陽光による火起こしは、曇りや雨の日には、もちろん火を起こすことは出来ないのです。
さて、ここで問題です。江戸時代の人達は、普段どうやって火を起こしていたのでしょうか。(ちなみに、マッチが日本で製造されるようになったのは、やはり明治以降のようです。)生徒の中には、原始人のようにキリモミ式で、毎日火起こしをしていただろうと想像する者もいましたが、はたして江戸っ子が、そんなちまちましたこと?を毎日していたと皆さんは想像できますか? あるいは、起こした火を家の中でず~っと消さずにいたのでは?と答えた生徒もいましたが、いくら火事で有名な江戸の町といったって、山間の囲炉裏のあるかやぶき屋根の家とは違うのですから、家の中に常時火は置いてなかったでしょう。江戸時代の人達が普段、どのようにして火をつけていたか、答えはこれ、「火打石」です。火打石といっても、石だけでは火はおこせません。石には必ずセットとなる「火打金・火打鉄(かね)」が必要でした。農民などは便宜的に、鉄を農具の鍬や鋤、鎌などに替えて火花を打ち出していたとのことです。関東の庶民の間で普及していた火打金は特に「火打鎌」と呼ばれていて、高度な技術で焼き入れをした鋼鉄で出来ていたそうです。その、「火打石・火打鎌」を、なんとか手に入れ
火打石セットてみたい!と思いますよね、やっぱり。さらになんと、現代でもこれが、購入できるんです。というわけで、生徒の前で、火打石、火打鎌の実践です。そしてこれは、なかなか使えるものでした! コツをつかめば、すぐに火をつけることが出来ます。生徒も、おっかなびっくりでしたが、石と火打鎌を打ち合わせて、火花を出すことが出来ました。「マッチもライターも使わずに、火をつける方法」という課題は、これでクリアということで良いでしょうか。
さてさて、家の外で焚き火禁止と妻に言われた私は、キャンプ場でならOKか、と思い、家族をキャンプに誘う計画を立てました。そして、キャンプ場をいくつか調べていくうちに、あることに気が付いたのです。キャンプ場でも、焚き火禁止のところがある!(むしろ、今はそういう所の方が多いのかもしれません。)最近のキャンプ場では、「焚き火台を使用してなら焚き火可」というところが多いようなのです。焚き火台かぁ。・・・・そういうわけで、焚き火台もさっそく購入です。それが本当につい、最近のことです。ただ、週末に天気が悪かったり、学校・幼稚園の行事があったりで、キャンプには未だ出かけられず、娘からは「いったいいつキャンプに行くの?」と言われています。我が家の焚き火台、出動するのはいったいいつになるのでしょうか。
チリでお土産に買ったマテ茶用のマテ 私にとって、思い出深い焚き火のシーンの一つは、パタゴニアのテントサイトでの焚き火です。チリ・パタゴニアのパイネ国立公園を放浪?していた時に、そこで出会った異国の友人達と焚き火を囲んでお茶を飲み、語り合ったことが忘れられません。テントサイトにはゴロリと手頃な倒木があって、僕らはそれに火をつけて燃やしていました。南米では、マテ茶というお茶を仲間内で回し飲みする習慣があります。もちろん僕らも、一つの「マテ」(瓢箪製の容器)のお茶を回し飲みしながら、お互いのしてきた旅の話や、将来の夢などを、焚き火を囲んで語ったものでした。二十代終わりの頃の話です。
今の私達には、焚き火を囲んで、子ども達に語れることや時間がどれほどあるでしょうか。焚き火の炎と真摯に向き合って、子ども達に語るべきこととは何でしょうか。
マッチを擦ったことのない子どもがいます。100円ライターは危険だからと、手に入りにくくしてしまいました。火のおこし方を忘れてしまった人は、いつしか正しい火の扱い方も忘れてしまうのではないでしょうか。正しい火の扱い方を忘れてしまった人類は、いつしか間違った火のおこし方をしてしまうに違いありません。
焚き火台でもいいから、我が家でも娘と一緒に外に出て焚き火ができますように。
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