BOOK 64号会報

BOOK紹介

シリーズ 子ども理解と特別支援教育5 生き方にゆれる若者たち』

紹介者:石川美紀子

  地球冒険学校のイベントで幼い頃からお世話になった孫たちが、今年は小5~中3です。コロナウィルス禍で子どもたちは休校で自宅学習。両親はオンラインでの在宅仕事を含めて普段より大変な状況。3月と5月に1週間ずつ5人を預かり、「思春期」に向き合うことになりました。
 今回ご紹介する本は、「障がいや病いを抱える当事者の自己の育ち」という副題がついています。『シリーズ1障がいをもつ子どもを理解することから』は会報59号で宮下純一さんがBook紹介しています。
 私は教員退職後15年になりますが、障がい児教育では小5・6年、中学部、高等部と、思春期の子供たち・青年たちの担任を経験しました。思春期特有の自分の身体の中からの変化に戸惑う姿、解らないことを解ろうと苛立ちながら訴える表情、力での束縛を嫌い、自分の好き、やりたいことに身体で進む様をたくさん見ました。自分の子育てでは、長女が中学生になったとたんに、それまでの可愛い子が変身して、親を避けて反抗的な口利きをするのに参ってしまったことがあります。
子育て現役の娘たち、教育現場の先生たちから聞こえて来るのは、私が現役だった時代よりも「子育て・教育」が困難になっている、難しくなっている、楽しく仕事できなくなっているという声です。そんな時、執筆者のお一人から紹介され、購入して読んだのが、この本です。この本、子育て現役の先生たち・親ごさん、教育や福祉の現場・行政に携わる人たちに読んでもらいたいです。

Book紹介1.jpg「青年期の発達を築く」為の大事な指摘を本文から引用してみる。
*集団から切り離して生徒個人に「能力(スキルや態度)」を「もつこと」を重視するようなキャリア教育は、生産性の有無で人間の価値を評価することになりかねない危険性がある。
*多様な集団の中で「身体をとおして他者を感じ、関係を生き、情動や感情を生起させ、知的な発達を実現させて」、「これが自分だ」という「自我意識を獲得していく」のが青年期である。
*現代社会は「一人で生きていくことができてしまう社会だから、人とつながることが難しいのは当たり前だし、人とのつながりが本当の意味で大切になってきている。」
 そして「青年期の発達」という課題に近づくために、本書は様々な具体的事例を、当事者の語り(第1章)、高等部卒業後の支援者から(第2章)、高等部教育現場から(第3章)、提供しています。病気や障がいという困難を抱えた若者たちが、高等部クラブ活動・行事作り・創作劇、院内学級、寄宿舎、作業所、一般就労職場、アート教室、ヘアメイク教室、「福祉型専攻科」事業所、性の出前講座 等々様々な場・活動を通して他者との関係性の中で、励まされ、励まし、自分を成長させています。
地球冒険学校準備会の活動においても参考になることが多い本です。若者に学び、年老いても彼らに励まされて元気に生きていきたいと思います。

原まゆみ・土岐邦彦・佐藤比呂二・日暮かをる・森博俊 編著

価格:2,400円(+税)
 発行:群青社、発売:星雲社