紙上ツイッター会報64号

小野 晴巳(地球冒険学校準備会顧問)

 コロナ禍の中で、会報特別号が3回も発行されました。興味深く読ませていただきましたが、皆様の自粛の様子がわかりとても参考になりました。報道されているように自粛生活は大変なのに、障がいを抱えている中での生活は想像以上に大変です。新聞の読者投稿にも「自閉症児を抱えての自粛生活でルーティンが崩れた」と悲痛な声が載っていました。東日本大震災の時にも避難所に入れずに自動車生活の報告など多数ありました。このように状況は災害のたびに起きています。歴史的にも繰り返されてきました。
 私達はつらい過去から学び、これからの将来を明るくするために会員の皆様の体験を共有して協力できるような社会にしたいです。
 今回の特別号は事務局・世話人の皆様の発案と協力により発行されましたが、あらためてお礼申し上げたい。と同時に、皆様の率直なご意見ご感想をお寄せいただき「絆」を深めたいと思います。
はじめに
 ちょっと大げさな題になりましたが、私がふだん考えている中身の軽い内容です。気楽に読んでください。
 日本人は議論を好まない、おとなしい、言いたいことも黙って耐える民族です。これでは未来はありません。世界から取り残されます。民主主義は賛成も反対も意見も見解も率直に言ってお互いの立場を尊重しあうのが基本です。独裁国家にならないように大いに話し合いを重ねながら相互理解をしましょう。
1.病と人間の文化史-コロナ禍より学ぶ-
 またまた大げさな題名になりました。世界中で新型コロナが拡がっている中での自粛生活をしいられています。病気について、とくに疫病に関心を寄せるのは当然でしょう。それで、過去に書かれた小説を読んだり映画を観たりしている会員の皆様も多いと思います。
小野本.jpg 私も昔そんな本を読んだな~という、おぼろげながらの記憶を頼りに本箱をかき混ぜていたら見つかりました。それが題名の立川昭二著『病と人間の文化史』昭和59年発行新潮社の本でした。
 私も誕生日がくると80歳になりますが、数えてみると病気とは無縁ではありません。白内障・前立腺がんの疑い・前立腺肥大・ヘバーデン関節症・扁桃腺肥大症などの手術を経験し、かぜ、下痢、湿疹など数知れずかつ生活習慣病をかかえて生きてきました。
 そんな私ですが、この本を読んでみて面白いと感じた部分を紹介したいと思います。
 世界中で新型コロナが拡がったように、昔からパンデミックになるのは道(ロード)があるということです。
*シルクロードをたどった疫病-天然痘・ペスト
*海上の道をたどった疫病-梅毒・蜜柑風邪・コレラ
   蜜柑風邪とは江戸末期の黒船からもたらされたインフルエンザのこと
*空の道からの疫病-スペイン風邪・ラサ熱
  スペイン風邪は最初1918年早春アメリカ、4月にフランス、4月末スペインにひろまり、スペイン風邪を呼ばれるようになったそうです。古い本なのでサーズ、マーズ、エボラ出血熱などの記述はありませんが、空の道に分類されるのでしょう。
 グローバル化が進んできた世界が、コロナによってどう変革するのか現時点では不明ですが、変わるのは確かでしょう。どんな道(ロード)が展開するのでしょうか。
 それぞれ詳しく説明したいのですが医者でもないので、また異論もあるのを承知で書いていますので、各人それぞれに調べたり聞いたりしてください。
 では日本の事はどうなのかと思ったら、こんな事が書いてありました。
主たる内容は飢餓の事でした。
 日本、いや世界の歴史はこの飢餓をめぐる戦いの歴史であると。そして奈良時代から記録があり、近世までの悲惨な飢餓日本を紹介しています。確かに飢餓問題こそ戦争や騒乱を起こす最大の原因です。コロナ自粛による「命か経済か」の問題も究極はここにあるのです。
 最後に私にとって一番の問題点を投げかけた章を紹介します。
*疫病がつくる憎悪と犠牲
 コロナの恐怖と先の見えない不安、そして正義感から差別的行動が目立ちはじめました。由々しき問題です。
 立川氏は次のように解き明かします。
 中世期に「黒死病」と恐れられたペストはヨーロッパ全体で四分の一、あるいは三分の一が死んだと言われています。恐怖にかられた人々は狂乱と退廃におちいり、集団的パニックになりました。そしてペストの原因探しが始まりました。「神罰説」「占星的原因説」「大気汚染説」など、最後は「毒物説」がもっとも受け入れやすい説になり、犯人はユダヤ人が毒を井戸に投げ込んだりばら撒いたりしたことになってしまったのです。その結果は明白です。ユダヤ人の大虐殺です。
 日本でも似たような事件がありました。関東大震災(1923年)の朝鮮人虐殺ですね。
 戦争・天災・疫病など社会不安や将来が不透明な時は、流言飛語が乱れ飛び差別行動が起こります。なんの根拠もないまま「スケープ・ゴート」をでっちあげると。
 私もそんな記憶があります。1981年春、アメリカで原因不明の病気が発生し発病すると2年以内で死亡すると発表され、世界中の人々を恐怖に巻き込んだいわゆる「エイズ現象」です。
 あの時も登校拒否・診療拒否・買い物や接触回避・宿泊や入浴もダメ、葬儀さえも差別されました。今振り返っても恐ろしいことでした。
 私のささやかな人生で差別・迫害などの経験、社会情勢を記憶している限り並べてみます。ライ病、結核、戦争遺児・孤児、傷痍軍人、朝鮮人、障がい者、近年では原爆被害者、水俣病、原発事故の風評被害などです。
 どれをとっても調べれば調べるほど当事者は差別・迫害を受けながら歯を食いしばって生き抜き、後世に事実を伝えてきました。受け止める我々は言葉もありません。
 振り返ってみるともっともっとあると思います。私自身も加害者であり被害者でもあったのではと反省します。二面性を自覚します。もちろん内面的であり行動の自覚はありませんが、本人が無自覚無反省のまま行動してしまう怖さを知っているので猛省したいと思います。
 このようにコロナから学ぶことは沢山あります。そして不幸に不幸を重ねるような歴史を繰り返したくないものです。
さいごに
 この原稿は5月20日現在の状況で書いています。緊急事態宣言の解除は不明ですので、もし次号に書ければその後の感想と、戦争とくに太平洋戦争のことが私のテーマですので「コロナと戦争」の関連性で書いてみたいです。