なめとこ山 会報52号



第49回

あぁ!部活動

  皆さんこんにちは。初夏を迎え、衣替えの時期となり、夏休みはどう過ごそうかなと考えるようになりました(気が早い?)。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。さて、今号の「なめとこ山通信」では、部活を話題に取り上げました。高校の部活動です。青春時代を振り返り、あるいは現役高校生(もしくはその親)として、部活に対して様々な思い入れのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、普通科の高校に勤める教員として、ここ数年私が感じたことを、いつものようにつらつらと綴ってみようと思います。お時間ありましたらお付き合いください。

 この4月から、私はまた新しい高校に勤務しています。普通科のA高校です。(特に名前を伏せる理由もありませんが、まぁ何かしらの支障が出ないように念のためです。)昨年度はB高校、その前はC高校、その前はD高校と、この数年で普通科の高校を渡り歩いています。高校に勤務すると、教員には担当する部活動が割り当てられます。主顧問でない場合はいくつかの部活動を掛け持ちすることになりますが、専らに出来る部活はいくつも受け持てないのが実情です。担当は、希望が通る場合も、あぁこれか、と思う場合もあります。と言いますか、私に、顧問として指導できる部活動が、特にあるというわけでは無いのです。球技を始めとする運動部に関しては、専門的な知識も技術も、活動している現役の生徒たちの方が、私より確実に上なのです。
 久しぶりの普通科の勤務先となったD高校では、私は女子バレー部の顧問となりました。D高校には、女子バレー部を技術的な面で支える顧問はいなくて、男子バレー部の主顧問が、女子バレー部の練習も見てくださっていました。また、外部指導員の方が、休みの日の多くを割いて練習に参加してくださいました。生徒たちは、基本的には自分たちで作った練習メニューを日々黙々とこなし、私の出来ることと言えば、ボールを集めること、時々ボールをあげること、基本的には練習を見守ることくらいでした。バレー部には、と言いますかどの部活にもだと思うのですが、独特の挨拶や掛け声や練習方法があります。試合や大会に生徒を引率していくと、会場の雰囲気にその思いをいっそう強くしました。同時に、試合前に守備や攻撃の練習を厳しくチェックしている他校の顧問の先生方を目の当たりにすると、何も指導できない自分を申し訳なくも感じました。試合や大会の時には、前述の外部指導員の方やバレー部の卒業生の学生さんが、試合前のアップを担当してくれました。トーナメントやリーグ戦の場合、試合に負けると線審は生徒がします。主審は私には出来ないので、他の学校から出してもらうことになりました。バレーボールのルールはボチボチわかるのですが、笛の吹き方や手のサインの出し方など、覚えきれないことはいくつもありました。ただ部員たちは皆、素直で、真面目で、短い間でしたがこちらもいろいろと学ばせてもらいました。
 次の学校のC高校では、私はサッカー部の顧問になりました。男子サッカー部です。こちらの学校にも、技術的な指導の出来るサッカー部顧問はおらず、生徒たちは部長を中心に工夫しながら練習をしていました。都立高校の教員はだいたい六年くらいで転勤となります。一つの部活動に熱心な教員がいても、その学校にずっといられるわけではありません。なのでどうしても、固定した監督さんのいる私立学校には、なかなか勝てないのです。ただ、都立高校の中にも、サッカーの強い学校、野球の強い学校などがあるのは事実です。そういう学校にはまず生徒が(推薦などによっても)集まり、指導者も、管理職(校長)が力のある教員を引っぱってくるということです。C高校サッカー部は、そこそこの成績ではありましたが、指導者には恵まれなかったのは、校長先生の引きが弱かったせいもある、というようなことも言われました。さてC高校でサッカー部の顧問になって私は、サッカー審判員4級の試験を受けて、試合の審判が出来るようにしました。おかげで、練習試合の時なども私が試合の笛を吹くことが度々あり、血気盛んなサッカー部員と一緒にピッチを走り回ることとなりました。審判の資格は年度ごとに更新するものなのですが、その後サッカー部を離れてしまった私は資格の更新をしませんでしたので、今は審判資格はありません。残ったのは、JFAのシンボルである八咫烏(やたがらす)のエンブレムとウエア、公式戦用のイエローカードとレッドカードです。でもこれは、いつか使える時が来るかもしれません。
 ところでC高校には、阪神や日本ハム、巨人で活躍した元プロ野球選手の先生がいます。引退後に教員資格を取り、採用試験にも合格して、赴任した都立高校2校目の学校がC高校になります。もちろん野球部の顧問をしていますが、サッカー部も副顧問として面倒を見ていただき、私が学校にいた時はいろいろなお話も聞かせていただきました。優しく、かつ情熱的な、社会科の先生です。この先生のように、高校には時々、えっと思うような活躍をされていた先生がいらっしゃることがあります。今勤めているA高校には、女性の体育科の先生ですが、数年前までラグビーの日本代表をしていた先生がいます。A高校には残念ながらラグビー部はないので、先生はラグビーの指導をしているわけではありません。そもそも女子ラグビー部のある高校そのものが、日本には数校しかないということです。せっかくの先生の経験がもったいないですね。先生自身は、もうラグビーはいいんです、というようなことをおっしゃっていましたが、きっとボールを持って、生徒と走り回りたいのではないかなと思うのです。
 C高校の次に私が赴任した高校は、B高校でした。赴任の決まる面接に行った時に、部活の希望を聞かれ、私は安易に卓球部がいいですと言いました。理由は、この年はオリンピックイヤーで、おそらくメダルを獲りそうな卓球は、大いに盛り上がるのではないかと思ったからでした。しかしB高校の卓球部は、とてもこぢんまりとした部活でした。顧問には、学生の頃から卓球をしていた若い先生がいて、熱心に生徒の練習相手もしていたのですが、いかんせん新入部員が集まりませんでした。私は副顧問として、何度か卓球の大会に足を運びました。その時、卓球の世界も、なかなか独特だなぁと感じました。例えば、高校の部活動を題材にしたマンガを思い浮かべてみましょう。野球なら「ドカベン」(まず「ドカベン」を挙げるのは世代的なものですね。最近では例えば「おおきく振りかぶって」でしょうか。)、サッカーなら「キャプテン翼」(この選択にも世代観ありですね。ピンポン.jpgあ、「キャプテン翼」は、小学生編からあります。)、バスケットボールならもちろん「スラムダンク」という感じですが、さて卓球はどうでしょう。私が思いつくか限りでは「ピンポン」という松本大洋のマンガがあります。松本大洋です。私は好きな漫画家ですが、独特な世界を描く人です。卓球はそういう、ちょっと独特な世界を作っているように私は感じました。でも、競技者人口はもの凄く多いと思うんです。なので大会に出かけると、本当に人が多くてビックリします。それで、高校の部活レベルになると、皆がオリンピックの金メダルを狙っているというわけではもちろんなくて、都大会出場が目標だったり、何回戦突破できたらいいかなというように、自分でこれくらいというラインを決めてしまっているところに、歯がゆさを感じたりもしたのでした。
 先のC高校サッカー部の時にも、また違った意味で複雑な思いをしたことがあります。C高校サッカー部は、部長を中心にとてもストイックな集団で、目標も都大会何回戦突破と、高いところに置いていました。ただ、部員全員がその思いを共有していたのではなく、中には、都立高校の部活動なのだからもっとゆるい感じでサッカーを楽しみたいという者もいました。しかし結局部員同士で話し合いをし、やる気の見られないものは部から追いだしてしまう形になったのでした。部活動も教育活動の一つですから、なるべくなら退部する生徒は出したくなかったのですが、本人もいられないと判断したのか退部届を出したのです。複数の生徒をまとめ、どこに目標を設定して指導していくのか、難しさを感じた出来事でした。
 さて今年度、勤務先がA高校に決まった私は、山岳同好会があることを知り、迷わずその顧問に志願しました。そうです、私がやりたかった部活動の顧問は、山岳部顧問なのです。現在都立高校には、二十数校に登山部・山岳部があります。多いと感じますか、少ないと感じますか。以前私が講師をしていた時には、E高校の勤務だった時に、山岳部の山行に同行して、奧穂高岳に登ったことがあります。それが仕事であっても、生徒と一緒に山に登ることは、とても楽しいものでした。そしてA高校でも、山岳同好会の顧問となることが決まり、主顧問の先生と一緒に生徒を引率して、4月末にまず新入生歓迎の山行を行ってきました。大月から岩殿山という山に登りましたが、鎖場あり、断崖絶壁ありの、変化に富んだわりとスリリングなルートで、とても楽しい山行となりました。現在、夏合宿はどこへ行こうかと皆で相談中です。
 山岳部といえば、春休みに登山講習会に参加していた栃木県内の高校生が、雪崩に巻き込まれて8名が亡くなった事故は記憶に新しいところです。都立高校では以前から、冬山での活動は禁止となっています。今回の事故はどのような状況で起こったのか、検証がどれほど進んだのか、ニュースを追いかけているわけではない私には、詳細なところはわかりません。雪崩注意報が出ている中で訓練を強行した点から言えば、事故というより人災であった可能性も否めません。顧問らの判断への非難も聞かれますが、一方で、雪崩事故で高校山岳部の灯を消すなという声のあることも知りました。この栃木の「春山安全登山講習会」には、県内から、7校60人以上の高校生が参加していたということです。山は危険という認識があったからこそ、それだけ多くの生徒が訓練に集まり、その危険の克服の仕方を真剣に学ぼうとしていたと言えるのかもしれません。亡くなられた8名は無念であったことと思いますが、山は危険ということだけで、合宿や訓練が中止になってはならないと私も思ったのでした。
 ところで、A高校では山岳同好会の他に、私は剣道部の副顧問にもなり武士道シックスティーン.jpgました。剣道も、わかっているようで、実はまったく未知の世界でした。先日大会があり、生徒を引率して出かけたのですが、有効な一本とはどういうものなのか、素人の私にはよくわかりませんでした。ルールでは、「有効打突は、充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする。」となっています。「充実した気勢」に「残心」です。めちゃくちゃ奥の深いもののような気がします。今回引率したA高校の生徒たちは、皆一回戦で敗退してしまいました。見ていて、たしかにスピード感が足りなかったり、1年生はガチガチに緊張していて力が出せなかったりと、まぁ負けの理由はわからなくもないのですが、これから試合に勝ち進むようになるためには、道のりは長いように感じました。でも、ひたむきに頑張る姿を、全力で応援しています。先ほど高校部活動を題材にしたマンガの話を出しましたが、剣道では、「武士道シックスティーン」という誉田哲也の小説作品があります。剣道に青春をかける二人の女子高生の話で、続編もあり、映画化もされています。とても楽しく読め、剣道という武道への興味が少し湧いてきたりもします。お薦めです。
 高校時代、私は水泳部でした。当時、顧問の先生は水泳の技術指導をしてくれるというわけではなく、私にいろいろなことを教えてくれたのは、部活の先輩方でした。もし今、私が水泳部の顧問になったとして、私も技術的なことは教えられないかと思います。ただ、生徒たちが気持ち良く部活動に専念できるように、環境を整えることはしてあげたいと考えます。今は、山岳同好会と剣道部が、楽しく活動できるように、生徒を見守っていきたいです。部活動で、毎週土日も出勤している先生がいたりして、部活動顧問はなるものではないという声もあります。いろいろたいへんなこともありますが、生徒が私の世界を広げてくれることもあり、無理せず気負わず、でもなるべく情熱をもって部活動に関われたらと考えています。